地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「旨いだろ?飴は二つにわけられないから、こうすればお互いが味見出来るしな。じゃあ俺は事務所に行って弁当取ってくるな」
そう言って笹山くんは会議室を出て行った。
こんな風にされたのは初めてで、笹山くんの予想外の行動はいつも私の心臓をドキドキさせる。
それにこの飴、美味しいし……。
私はオフィスに戻り、自分の机から弁当を持って会議室に行くと、笹山くんが椅子に座って弁当を食べていた。
私は笹山くんから離れた場所に座ろうとしたら、こちらをジッと見つめられてしまった。
眼鏡を外しているし、そんな顔で見つめられると顔を見れなくて俯いた。
「何でそんな離れんの?隣座れば?」
「別に隣に座らなくてもいいでしょ……」
そう言って私は椅子に座って弁当をテーブルの上に置き蓋を開けて食べようとしたら、笹山くんが自分の弁当を持って私の隣に座った。
「さっきまで隣に座ってたし、オフィスでも机は隣なのに何で俺から離れんの?もしかして……少しは意識してくれてるとか?」
「なっ、べ、別に意識なんてする訳ないじゃない、たかが飴を口に入れられたくらいで!」
そう言ってしまった後に私は口を手で押えた。
これじゃさっきの事を意識してますって言ってるみたいなものだ。
「へぇ……さっきの意識してんだ?なんならまた口移ししてやろうか?」
クスクス笑いながら余裕ぶってそう言う彼に、言い返したいけど余裕なんてない私は俯くしか出来なかった。
「てか弁当食べないなら俺が貰う」
「えっ、あ、ちょっと」
「俺の食っとけ」
そう言われて私の弁当を美味しそうに食べだした。