地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
暫く車を走らせて、着いた場所は映画館だった。
「映画とか久しぶり来た。玲美が見たいの選べよ」
「急に言われたって……」
そう言ったものの、何だか面白そうな映画があったからそれを見る事にした。
アクション物だったけど、凄く面白くて映画に夢中になっていた。
だが途中でさり気なく笹山くんが私の手を握ってきて、チラリと彼の顔を見るとスクリーンに集中している。
それにギュッと握られてしまい、さっきまで集中していた私だったが、繋がれた手が気になってドキドキしてしまい、集中力が欠けてしまった。
こうして男の人と二人で映画館とか初めてだから対応に困る。
本当に女子中高生と変わらないよね。
恋愛経験は不倫しかない私にとって、デートは憧れでしかなかった。
でも……こういうのも楽しいかもしれない。
映画も終わり、私達は映画館を出た。
「玲美が楽しそうで良かった。面白かったな今の映画」
「そ、そうだね。それよりいつまで手を繋いでいるつもり?」
「デートなんだしそんなの家に送って行くまでに決まってるだろ?それよりこの近くで何か食べよう。腹減った」
そう言って笹山くんは歩き出す。
背も高いし、顔はイケメンだし、周りからの視線を痛いほど感じる。
『うわぁ~あの人カッコイイ』
『ちょっとあの人ヤバくない?イケメンすぎるんだけど』
『彼女羨ましい』
そんな声が聞こえた。
確かに彼はイケメンなのは私も認めるけど、性格悪いですよ?
見た目に騙されちゃダメですよ?
それに私は彼女ではないですが……。
そんな女性陣の言葉なんて気にしない様子で歩いて行く。
会社では地味男の振りしてるけど、普段は地味男ではないしこうして言われるのも慣れてるのかもしれない。
私が隣に居なかったら声、絶対にかけられてるよね。
「あそこのカフェで何か食べようか?」
「え?あ、うん」
色々と考えたりしていたから、急に話しかけられてビックリしてしまった。
私達はカフェに入り、注文した。