地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「ここで待ってて。まだ人が居るから弁当箱だけ取って戻ってくるから」
「人って山岡主任と山梨だろ?行って平気なのか?」
何だか心配そうな顔で笹山くんは私を見て言う。
「大丈夫だよ……じゃあ行くね」
そう言って車を降りた。
歩いて会社まで向い、そっと扉を開けた。
一階の事務所は明かりが消えていて、入り口と二階の階段に明かりが付いてるだけで薄暗い。
私は音を立てないようにそっと歩いて階段を登る。
二階に着くと、二人の話し声が聞こえてきた。
『山岡主任の奥さん、木曜が誕生日だったんでしょ?良かったんですか一緒に祝ってあげなくて』
『それ理沙が言う?お前が俺を離さなかった癖に』
そんな会話が聞こえて歩く足を止めた。
えっ?何で山岡主任は山梨さんを理沙って言ってるの?
それに……
木曜日って夕方に私の家に来てケーキ買ってきてくれたのは、奥さんが誕生日だから次いでだったの?
山梨さんが山岡主任を離さないって何?
意味がまったくわからなかった。
『だって……日曜日に山岡主任に抱かれた時、相性も良かったからまた抱かれたくて』
『それは俺も一緒』
『奥さん居るのにいいんですかイケナイ事しても?』
『誘ったのは理沙だろ?なぁ……また同じ事しよっか?』
『もう、ダメだよ!会社だよココ。もし明日、映画に一緒に行ってくれるならいいよ?』
『嫁も出産前で今日から里帰りだからいいよ』
『あっ、もうエッチ……っん』
そんな声が聞こえてきて、私は驚きとショックを隠しきれずその場から動けなかった。
山岡主任が山梨さんと……
どうして、何で……。