地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
私は立ち上がり、冷蔵庫から二本目の缶ビールを取り出して、笹山くんにも渡した。
「二人が映画館に行くなら俺達も行こう」
「え?映画館って言っても何処の映画館かもわからないじゃない?それに行って何するの?」
「それなら大丈夫だ、この前に山梨が最近出来たショッピングモールに行きたいとか言ってる声が聞こえたし、確かあそこは車で一時間くらいの場所だから山岡主任も家から離れてる場所なら行くと思うんだ。得意先のバイヤーも最近、家族で行ったと言っていて映画館も入ってるって言ってたから間違いなくショッピングモールに行けば会える筈だ。俺は常に会社では地味男だし、今の姿だったら俺だってバレないだろ?玲美に二人が一緒に居るのがバレた時の反応も見たいし、山岡主任が俺と玲美が一緒に居るのを見てどんな顔をするかが俺は楽しみだ。アイツは必ず夜にでも玲美に連絡してくる筈だし、今まで我慢してたぶんアイツに言いたいことを言ってやれ」
笹山くんはそう言ったけど、上手く言える自信もない。
「心配するな、俺が居るから大丈夫だ!それから酒飲んだから今日は泊まるからな」
「え、と、と、泊まるっ!」
「玲美が飲ませたんだろ?飲酒運転させるつもりかよ?それにさっきは"抱いてもいいよ"って言ってたじゃないか」
「そ、それは……」
「兎に角、泊まるから」
なんて言って笑ってる。
何も考え無しで缶ビールを渡してしまったが、もう飲んでしまったから何も言えなかった。