地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
車は走りだし、私は気になった事を聞いた。
「そう言えば新聞読むんだね?」
「ああ、得意先を回ってるしたまに話題がでるから答えられるようにもしたいしな。世の中の動きも頭の中に入れとかないと、商品の話し以外にコミュニケーションの一つとして新聞は読むし、スマホ使ってネットでも見るようにしてるんだ」
「営業の仕事も大変なんだね」
こうして仕事しながらもコミュニケーションの一つとして若いのにしっかりしてるなって思ったし、生意気だけど笹山く……じゃなくて陽は仕事に対しては真面目だし、商談だって他の営業に負けないくらい上手く話を進めてたもんね。
「まぁ確かに大変だな。だけど玲美達も大変なのもちゃんとわかってるし、俺達営業が無理いって発注を頼む時は、メーカーに頭下げてくれてるだろ?感謝してるよ」
「ありがと」
こんな風に感謝されるとやっぱり嬉しい。
「俺はもっと玲美とコミュニケーションを取りたいんだけどな……それよりさ、もしショッピングモールで山岡主任と山梨に会っても動揺したり泣いたりはするなよ?二人が居るのに驚くように演じるんだ。アイツは絶対に夜に連絡くるか家に来るかするだろうし、泣くのはアイツに言いたいこと言って別れを告げた後に俺の前で泣け……俺はずっと玲美の側に居てあげるから」
「……」
二人を見て私は普通な顔で居られるだろうか。
昨日の今日で動揺してしまうかもしれない。
そう思うと行くのが怖くなった。
「大丈夫だ、俺が居るから」
そう言って陽は私の手をギュッと握ってくれた。
いつかはそんな日がくるかもしれないって思ってた。
私が嫌いになって別れるならまだ楽なのに、好きな気持がある中でわかった山岡主任の本性。
女遊びを繰り返し、山梨さんまで……。
逃げてばかりじゃいけないし、まだ胸は痛むけど、ちゃんと自分の口で山岡主任との関係を終わらせなきゃいけない。