地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「山梨さん?」
私が山梨さんに声を掛けると二人は同時に振り返った。
「えっ、高瀬先輩……」
驚いた様子で腕を絡ませていた手を離した。
それに山岡主任も私の姿をみて目を見開いている。
「アレ……山岡主任。えっ、二人って」
私はわざとらしく口を手で押さえて驚いた様子で言葉を言った。
「イヤ、これは違うんだよ。たまたま駐車場でバッタリ会って話したら、山梨さんも同じ映画を見ると聞いて、お互い一人だったから一緒に来たんだよな?」
「え、そ、そうですよ高瀬先輩。別に私達は何も……」
全部知ってる私は、そんな二人の様子にイライラした。
さっきまでは会いたくないとか思ってたけど、今は怒りに満ちている。
「お待たせ玲美」
遅れてきたように見せかけて陽が私に近づいてきた。
話しかける前に陽は私に言った。
『少し遅れてから玲美の所に行くから頑張れよ』
と言い、陽は姿を消した。
「二人は玲美の知り合い?」
「会社が一緒で上司と後輩なんだ」
「それより君、俺に興味あるの?」
自分の置かれている立場を忘れる程、山梨さんは陽の姿を見て一瞬で心をうばわれたかのように見惚れていた。
陽にニコリと微笑まれてそう言われた山梨さんは、頬を赤くして少し照れているようにも見える。
隣に山岡主任が居るのも忘れて……。
「まぁ俺は君みたいなブスに興味ないんだけどね。俺が興味があるのは玲美だけだし。それに……上司か何かしらないけど既婚者みたいだし?奥さんに隠れてこんな事して何とも思わないのあんた?」
「お、俺達はたまたま会っただけで……そんな関係じゃない!他人のあんたに関係ないだろ?」
イライラした口調で山岡主任は陽に言う。
山梨さんは陽に"ブス"と言われた事がショックなのか俯いて何も言わない。