地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜




「何剥きになってんの?さっき腕絡ませて歩いていたのに言い訳なんていい大人がかっこ悪。まぁ、俺達には関係ないからご自由に仲良くして下さい。行こうぜ玲美」


「あ、うん……。それじゃあ失礼します」


そう言って山岡主任に頭を下げて顔を上げた時に目が合った。
何か言いたげな瞳で山岡主任は私を見たけど、私は陽の手をギュッと握って山岡主任から目を逸らして二人から離れていった。


「よく頑張ったな玲美。でも本番はまだ終わってないからそれまでは気を抜くなよ?今すぐココから早く出て、何か美味しい物でも食べに行こうぜ」


「うん……」


怒りと悲しみでもう何も考えたくなかった。
例え一番になれなくても、彼にちゃんと愛されていると思っていた。


彼の優しく頭を撫でる手が好きだった。
私を呼ぶ声も、抱きしめてくれる温もりも、キスをしてくれる唇も、何もかもが大好きだった。
私と一緒に居る時間は、私だけを愛しているんだとそう信じていた。


別れを考えながらも離れられなくて、山岡主任以外に考えられなかった。


それくらい彼を愛していた。


私が彼を愛した三年間は苦しくて、悲しい事の方が多いかったけど、一緒に居る時間は幸せだった。


二人を責める資格は私にはないけど、今まで過した三年間を思えば、言葉にならないくらい辛い。


陽に手を引かれて駐車場に着き車に乗ったが、まだ私の心は落ち着かなかった。




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