地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
宛もなく走って着いた先は前に陽が連れて来てくれた水族館だった。
何でここに来たのか自分でもわからないけど、気がつけば来ていた。
私はサングラスを掛けて車を降りると、水族館の中に入った。
何だか一人で水族館に行くのか悲しすぎて、顔を誰にも見られたくなかったからサングラスを掛けたけど、それも何だか虚しい。
魚が泳いでいるのをじっと見つめていたら、四歳くらいの男の子が近くに来てはしゃいでいた。
日曜だからか親子連れの家族が多いし、その中で私は一人で魚を見てる何て……。
やっぱら虚しすぎると思い、水族館を出て洋服でも買いに行こうと思い、歩いて出口に向かおうと歩いてる時だった。
『啓太(けいた)、走って勝手に行ったら迷子になるだろ?』
聞き覚えのある声に、私はさっき居た場所を振り返った。
するとそこには陽が居て、さっき私の近くに来た男の子の頭を撫でていた。
はっ!?
な、何で陽がこんな所に?
それに啓太って!?
私は少し離れた場所から陽と男の子を見ていると、そこに綺麗な女性が現れた。
『ママっ、魚がいっぱいだよ』
『本当ねぇ、いつもパパが忙しいから今日はこれてよかったね?あっちでイルカショーが始まるから先に見に行こうか?』
『うん』
ママ?パパ?
呆然として見ていると、男の子を真ん中にして歩き、陽と綺麗な女の人は男の子の手を繋いだ。
その姿はどう見ても家族にしか見えなくて、私は更に頭が混乱した。
どうにか水族館を出て車に乗った。
陽は結婚してるの?
でも年齢は四歳くらいの男の子。
じゃあ陽が十代の時の子供?
女性は恐らく私より一つか二つは年上だと思う。
頭の中で色々な妄想をしていたが、買い物をする気にもなれずに自分の家に帰ることにした。