地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
家に帰って直ぐに私はスマホを手に取り凪に電話した。
『もしもし?』
「凪……私、陽に騙されたかも」
『えっ?全然話が分かんないんだけど。今出掛けてるから後で貴之(たかゆき)と一緒に行くから待ってて』
そう言って凪は電話を切った。
いいな凪は、幸せそうで。
貴之とは凪の幼馴染で、もう二人は付き合って十年になる。
私も二人を知っているけど喧嘩しても仲良しだ。
来年には貴之と結婚も決まっている。
何だか申し訳なく思いながらも、さっきの水族館での出来事が頭に浮かぶ。
私なりに考えてみた結果、陽が学生の頃にさっきの女性と付き合っていて、子供が出来たけど彼女はシングルマザーの道を選んだ。
結婚はしないかわりに、たまには子供を連れて出掛けている。
そう思うと何故か胸が苦しくて、陽とキスをした事、デートした事、好きだと言われた事を思い出し、気がつけば涙が出ていた。
付き合ってないのに、陽が誰といようが関係ないのに、何でこんなに胸が苦しいんだろう。
一人で涙を流していると、家のインターフォンが鳴り、凪達が来たんだと思い玄関の扉を開けた。
「玲美って泣いてるじゃない!とにかく中に入るね」
「お邪魔します」
凪と貴之を中に入れて、皆でリビングのソファーに座った。
「玲美、何があったかゆっくりでいいから話して?」
「あのねーーー」
私は朝の怪しかった電話の事、水族館での出来事を二人に話した。