地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
一階に降りて倉庫の隅っこで一人ダンボールの中から返品で帰ってきた商品の仕分けをしていた。
陽の得意先の数は他の営業に比べて多いから大変だ。
今しとかないと来週から年末にかけて時間がとれないかもしれないもんね。
メーカーに返品が出来る商品と出来ない商品に別けて仕分けを先にする事にしたが、かなり溜まっていて仕分けだけでお昼までかかりそうだ。
今日は若槻先輩も出勤で、電話対応はお願いしあているんだけど、午後からは得意先別に伝票に商品名を書かなくてはいけないし、午後も電話対応を若槻先輩にお願いしなきゃな。
私が一生懸命に仕分作業をして一時間くらいが経った時だった。
「お疲れ様……」
その声に振り向くと、そこには山岡主任が立っていた。
「お疲れ様です」
そう返事だけしてまた返品処理の続きをしていた。
「なぁ玲美……仕事が終ってからでいいから少しだけ話をしたいんだ。ちゃんと謝りたくて……」
「私はもう話す事はないです」
振り返ることなく私はそう言った。
「頼む、ちゃんと話をしないと俺の気がすまないんだ。皆が帰った後に十分でいいから時間を俺にくれないか?頼むっ!」
「……わかりました。十分だけですよ」
「ありがとう」
そう言った山岡主任は二階のオフィスへと行った。
今更何を謝るんだろ。
もう謝ってもらう事もないんだけどな。
その後も私は仕分をして、お昼になると若槻先輩と一緒にお昼を食べて、午後からも若槻先輩に電話対応をお願いして、得意先別に伝票を書いていた。