地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
伝票を全部書き終えたのは仕事が終る十分前だった。
私は伝票を山田さんに渡し、今度はメーカー別に商品を分けていた。
どの道今日は残業みたいだ。
仕事が終った若槻先輩が一階に降りてくると話しかけてきた。
「お疲れ様。高瀬さんはまだ帰れないの?」
「はい、後はメーカー別に分けるだけなんでそれが終わったら帰ります」
「じゃあ私も手伝うから一緒にしよ」
「でも悪いですよ」
「遠慮しないで?ダンボールに入れるまで手伝うからそれならいいでしょ?終わったら私はそのまま帰るから、高瀬さんも終わったら日報書いて帰れるでしょ?」
「ありがとうございます」
それから二人でダンボールに仕分けると、十分くらいで作業は終った。
「若槻先輩のおかげで早く終わりました。後はダンボールにメーカー名を書くだけなんで私がします。ありがとうございました」
「ふふっ、忙しいし時はお互い様でしょ?じゃあお疲れ様」
「お疲れ様です」
若槻先輩はそう言って帰って行った。
私も急いでダンボールにメーカー名を書き、終わると二階のオフィスに戻った。
「お疲れ様です」
そう言ってオフィスの中に入ると、居たのは山岡主任だけだった。
「お疲れ様、部長はそのまま直帰みたいだし、玲美は日報書いたらここで待ってて。俺は配送を先に帰らせたらオフィスに戻ってくるから」
そう言って一階に山岡主任は降りていった。
今日は出勤が少なく四人だけだったから部長が直帰して若槻先輩が帰ったから私と山岡主任だけなのか……。
配送を帰らせなくても十分くらいなら先に話せばいいのに。
そう思いながらも私は机に座って日報をパソコンで入力した。
それから山岡主任が戻ってきたのは一時間後だった。