全力で恋したい!
stage 02
松田先生は結局子犬を心の部屋に連れて来て、
誰にも内緒で飼うんだと言い出した。
あたしは全力で拒否したが、
聞く耳なんて持ち合わせてないらしく、
翌日にはふかふかな犬用品ベッドを
部屋の一角に置いていった。
松田先生に呼び出されたあの日以来、
少し不思議な事が起こっていた。
普段まったく鳴らない電話が、
外線で、かかってきては
無言で切れてしまう。
誰かが間違えて掛けてきてるのかな?
一応、教頭先生には報告したものの
あまり相手にしてもらえず、
あたしもあまり深く考える事もなかった。
それがあんな恐ろしい事になるなんて、
考えもしてなくて。
ープルルルルー
「はい。カウンセリングルームです。」
「……」
またか。
「どなたですか?番号お間違いでは……」
ー ツーッツーッ ー
最近無言電話の頻度が上がってる。
残業してる日は必ず。
とりあえず、早く仕事を終わらせて
帰ろう。
そう想って机に向かうと、
扉が開く音がかすかに聞こえた。
時間は20時。
流石に生徒は残ってるハズない。
また松田先生か、と
気にせず仕事をしていると
子犬が勢いよく鳴き出した。
びっくりして顔を上げると
見た事のない男が目の前に居て、
手には小さなナイフを持っている。
声をあげなきゃと想いはあるが、
怖くて声が出ない。
あたしは腕を強く引かれて、
部屋の奥にあるソファーに連れていかれた。
男はニヤニヤしながらあたしを見ている。
なんであたしが?
ここは学校なのに…
怖くて仕方ない。
吠えていた子犬の気配が無いことに気付いたのは
男が手に持ったナイフを
あたしの顔に近づけた時だった。