ブラッド
「俺は少し疲れてます。ここのところ、ずっと捜査に出てましたから」


「まあ、きついのも分かるよ。……コーヒー奢ってやるから、飲んで、気を落ち着けろ」


 伊里町がそう言い、近くの自販機へ行って、無糖のアイスコーヒーを二缶買った。


 片方を俺に渡し、自分もプルトップを捻り開けて飲む。


 互いに軽く息をついた。


 確かに何かと気分が落ち着かない。


 季節の変わり目に味わう感情だった。


 夏の名残が若干ある秋空は、見ていて何かと物憂い。


 太陽が昇っていても、日差しはそう強くなく、時は着実に流れていく。


 思う。


 今はG県警も試練なのだが、必ずここから脱却してみせると。


 わずかな力も、気さえ伴えば、大きなものとなるのだ。


 悪いヤツらには臭い飯を食ってもらわないといけない。
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