ブラッド
 何もしないで逃げるようじゃ、話にならない。


 思う。


 長い苦しみも、いずれ必ず実ると。


 自分に言い聞かせるように、だ。


 確かに現実は辛かったのだが……。


 伊里町がタクシーの助手席に俺を座らせ、エンジンを掛けて走らせる。


 どこかしら、きついのだけれど……。


 街を走りながらも、思う。


 季節は秋なのだが、気分が冴えないと。


 もちろん、警察の捜査に妥協など許されない。


 体調はあまりよくなかったが、現場を歩く。


 伊里町もだんまりを決め込むことがあった。


 多分、俺と同じだろう。
 
< 132 / 349 >

この作品をシェア

pagetop