ブラッド
 本来あってはならないことだが……。


 下古毛は段野が三宅を射殺した際、ふっつりと姿を消した。


 そして警察が暗闘を繰り返し、挙句、段野の別件逮捕へと行き着いたのだ。


 当初から、警察は段野を微罪で挙げるつもりでいた。


 規定した捜査方針通りである。


 従流会の気の荒い構成員であるヤツが三宅を殺害することは、赤子の手を捻るよりも容易く、事件も起こるべくして起こったといった感じだ。


 実際、警察の撒き餌と網に引っ掛かった。


 二年前の捜査資料の空白部分を埋めるのに、司直は狙いを定めていたのである。


 見事に当たった。


 繁華街での暴行事件で挙げたのは、段野を確保するための方便だったと言っていい。


 だが、下古毛の存在が警察を掠める。


 組対の刑事が、殺人幇助を働いたのには訳があるだろう。


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