ブラッド
 刈上げの髪をスタイリング剤で綺麗に整髪し、脇下に強めのデオドラントを振って、汗の臭気を誤魔化し……。


「佐山、今から行くぞ」


「……ええ」


 一瞬当惑したのだが、椅子を立って歩き出した。


 作業中のマシーンには自動でロックが掛かる。


 ユーザーである俺の指認証がないと、動かない。


 相方は停めていた愛車のタクシーに乗り込み、エンジンをオンにする。


 助手席に滑り込むと、伊里町が車を出した。


 この車もエコカーで、無駄なエネルギーは使わない。


 珍しい形の警察車両だった。


 G市内を走る。


 炎天下でも通りに人は大勢いた。

 
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