七夕幻想 《囚われのサンドリヨン後話》
ん?と彼は、首を傾げた。

「おかしいな…そんな事はない筈だが」
「は?」

 彼の瞳が不穏に光った。細長い指が、ツウッと唇から顎のラインをなぞる。

「俺とお前と…ここでの思い出は、一つだろう?ここに来たってことはさ……」

 含みのある笑いに、キョトンとしていた私は、ハタと言わんとする事を理解した。

「あ、イヤっ!別にそういうのを願っていたワケではなくっ……」

 言うより早く、私は彼に組敷かれている。

「ホンとに?」

 彼の得意の誘いの表情。
 緩やかに目線を流し、口の端を少しだけ持ち上げる。
 その色香に対抗できる筈もなく、私は彼の思い通りの方向に首を振ってしまう。

「素直でヨロシイ。ご褒美だ」

 私は自然に目を閉じた。唇を塞がれると同時に、シルクの夜着のボタンが1つずつ、外されてゆく……

 俄に、窓から月明かりが射し込んだ。

 照らされた肌をうっとりと眺める視線から、気恥ずかしくて目を逸らす。

 自らのスーツを床に投げ、彼は私に言った。

「次。長い出張には、また君を連れていこう。息子達もそろそろいいだろう。
 そうそう、ベビーシッターどドクターも一緒に、な」

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