☆お見舞いに来てください☆
その日の夜、仕事を終えた未来はいかにもふらふらの状態で帰って来た。
「……秀くん、気持ち悪い…」
「ちょっ……」
トイレに駆け込んだ彼女を追いかける。
胸に手を当て、苦しそうに息を吐く彼女の背中を気が気じゃない思いで擦り続け、その様子を観察する。
「大丈夫?立てる?」
うんと頷いたものの覇気がない。
顔は青白く貧血の症状さえあった。
俺は彼女を抱き抱えベッドに運ぶとすかさず隣に座り脈を測った。
「やっぱり少し早いね。ちょっとこのまま横になってて。それで明日病院に行こう。他に気になる症状はない?」
俺は労るように未来の頭を撫でた。
少し涙目でこちらを見上げる仕草に保護欲というものが顔を出す。
だが、彼女は仕事の方を心配した。
明日も教室の予約が入ってるのだと。
今は忙しく休めないと少し焦った表情を向けてくる。
「こんな状態で仕事になるわけないでしょ。むしろそんなふらふらの体で行ったら逆に生徒さん達に迷惑かけることになるよ」
だから少し強い口調で彼女に叱責する。
未来の気持ちは分かるが、本人が倒れたりしたらそれこそ本末転倒だ。
「…でも……」
「大丈夫。他にアルバイトのスタッフが2人いたでしょ。その人達に頼もう。開店当時から未来と一緒にやってきた人達なんだから安心だよ。なんなら俺も手が空いたときに様子見に行くし。こういう時は甘えてもいいんだよ」