満月の夜に優しい甘噛みを
私は104号室のドアの前に立った。

ふぅ~と1回深呼吸をしてドアを開けた。

「・・・失礼しま~す。」

そこにいたのは包帯を体のいたるところに巻かれて

横になっていた凛叶だった。

無論、意識はない。

「・・・凛叶。

こんなことに。」

私はそっと傷の生々しい跡が残った凛叶の頬に触れた。

(・・・意識が早く戻りますように)

そんな願いは届くことはなかった。

凛叶は寝たきりのままだった。

私はあることを思い出した・・・。

爽河くんが言ってた言葉・・・

「ヴァンパイアだし血がないと・・・」

血か・・・。

凛叶が意識を戻す方法は人間の血しかない・・・。

私は病室にあった注射器を手に取った。
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