満月の夜に優しい甘噛みを
私はその注射器を腕に注す。

「・・・痛っ。」

少しの痛みを感じたが私は自分の血を注射器に採った。

その血をカプセルに移して凛叶の口に注いだ。

(・・・これで本当に意識戻るのかな?)

半信半疑で私は血を凛叶にあげた。

血を全部あげてからも凛叶の意識はしばらくたっても戻らなかった。

(・・・やっぱだめか。

腕の血じゃ・・・)

ごめんね。

力になれなくて・・・。

私は家に帰ろうと病室を後にしようとした。

すると後ろから声が聞こえた。

「・・・んっ。」

後ろを振り返ると凛叶のさっきまで閉じていた目が

かすかに開いていた。

私の頭の中はパニックになっていた。

「・・・凛叶?凛叶!」

「・・・曖來。曖來なのか?俺・・・」

「・・・う、うん。

お医者さん呼んでくるから待ってて・・・」

私は医局に猛ダッシュで向かった。

私がお医者さんを呼んで病室に戻った時には

爽河くんがいた。

「・・・曖來ちゃん。まさか。」

「ちょっと確認させてね。」

爽河くんの声を遮るようにしてお医者さんがそう言った。

私と爽河くんは後ろに下がった。

「曖來ちゃん。凛叶に血飲ませた・・・?」

「・・・うん。あげたよ。」

「・・・だからか。

意識戻ったって聞いてびっくりしたよ~。」

「・・・ありがとね。曖來ちゃん。」

「うん。凛叶が元気になれば・・・」

「・・・やっぱ曖來ちゃんじゃなきゃ

凛叶はダメだな・・・」

「え?なんか言った?」

「いや。なんにも言ってないよ。

それより・・・お礼あげなきゃね。

凛叶の代わりに」

「え?お礼って・・・」

爽河くんは私にしか聞こえない声で言った

「今、曖來ちゃんは人のものだからできないけどまたするね。」

ちゅっと私のおでこに爽河くんがキスをした。

「・・・え!え?」

「ハハッ!かわいー」
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