満月の夜に優しい甘噛みを
ドアを開けた先に見えたのは

光に当たって反射しているベッド・・・

そこに眠っている凛叶の姿だった。

私は近づいて、椅子に座る。

(・・・相変わらず綺麗な顔だな~。

久しぶりに見るな。)

そんなことをしみじみと感じながら凛叶の寝顔を見ていた。

(・・・あ。

いつもセットしてるのに・・・)

気づいたら凛叶の前髪が

クシャクシャになっていた。

(そうだよね。

意識戻っても髪セットすることなんてまだできないよね・・・)

前髪を整えようと手を伸ばした・・・

「・・・ん。」

すると凛叶の手が私の手をつかんだ。

「・・・あ。起こしちゃった?

ごめん。」

私は凛叶から手を離そうとした。

でもその手を凛叶が離さない。

「・・・寝たふり。手離さないで。」

「・・・え?寝てなかったの?」

「・・・寝てたよ。ほら。スースー」

あからさまに嘘の寝息を立てる凛叶。

「・・・もう。」

そんな懐かしいやりとりが私の心を癒した。

「・・・久しぶりだね。

凛叶とこうやって会うの。」

「・・・・・・。」

「・・・凛叶?」

凛叶は目を閉じたまま目を覚まさない。

「ちょ・・・凛叶!凛叶?」

「・・・頭に響く。聞こえてるから。」

「じゃあ起きてよ・・・。」

「・・・曖來。俺、謝りたいんだ。

今ごろ言ってもわがままに聞こえるかもしれないけど」

「・・・あの時はほんとにごめん。

お前の笑顔を奪うようなことしてほんとごめん。」

「・・・もういいよ。」
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