満月の夜に優しい甘噛みを
・・・

曖來が病室に入ってきた。

俺は寝たふりで曖來を驚かそうと思った。

入ってきて椅子に座る音。

俺の顔をのぞき込んでる感じ。

曖來の匂い。

すべてが曖來を示していた。

ふと曖來の手が前髪に触れた時・・・

俺はその細い腕をつかんだ。

「・・・え?

寝てなかったの?」

そうだよ。

寝てないよ。

寝れるわけない。

曖來の質問に俺は心で答えた。

俺は久しぶりの曖來の声を聞いていた。

心地よくて目を閉じて聞いていた。
< 120 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop