満月の夜に優しい甘噛みを
「・・・コホン。」

爽河くんが小さな咳払いをした後に続ける。

「・・・えー。菜原曖來さん。」

「・・・は、はい。」

突然のフルネーム呼びに驚く私をよそに、

爽河くんは続ける。

「吸血鬼(ヴァンパイア)を愛するうえで、

いくつかの決まり事があります。」

「・・・決まり事?」

「その決まり事を受けれる覚悟があるのなら

この契約書にサインを書いてください。」

(本当にこういうのあるんだ・・・)

「・・・わ、わかりました。」

「・・・知ってると思いますが、吸血鬼は不死身です。

彼はあなたが死んでも、生き続けます。

辛いことも必ずあります。

そんな時あなたは永遠に、吸血鬼である

観音凛叶を支えることができますか。」

「そして、それを受け入れ、

あなたの全てを、

観音凛叶に捧げることを誓いますか?」

まるで、結婚式の誓いの言葉のような聞き方。
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