満月の夜に優しい甘噛みを
(・・・あ。やっぱり)

私はすぐにそう思った。

そこに立っていたのは観音凛叶。

「・・・なにしてんの?」

「い、いやあの・・・

猫が怪我しててそれを手当てしようと思ったら包帯がなくて

止血ができなくて・・・」

「・・・あーそういうこと。

どいて。」

そういうと観音凛叶は私のいた場所を軽々ととって子猫を見ていた。

「・・・あ、あの~」

彼からは反応がなかった。

彼はただ猫の足の怪我をじっと見ていた。

すると、

彼は猫の足から出ている血を見て、

体が震えているように感じた。

「ど、どうしたの?大丈・・・」

私は喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。

彼がふりむいた時

紺色の目から真っ赤な目に変わっているように見えたから。

すると彼はすぐに私から目をそらして、

何かを我慢するようにズボンを手で掴んでいた。

赤い目・・・

血を見て震える・・・?

まさか・・・

青空が言ってたことって本当なの?

彼はもしかして・・・

いや、そんなことあるわけない。そんな・・・


そう思った瞬間・・・

こっちを向いた彼の目はいつも通りの紺色の目だった。

(あれ?赤い目じゃ・・・・・・

やっぱり気のせいか・・・)

「どうした?ほら、終わった。猫」

「あ。」

子猫の足には包帯が綺麗に巻かれていた。

彼は子猫を抱きかかえ

彼は笑いながら猫を優しくなでていた。

笑いながら。

(猫にはあんな優しい顔するんだ・・・

さっきの目は何だったのかな?)

私の見間違いか、そう思い、

私は猫をかかえた彼を見ていた。
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