満月の夜に優しい甘噛みを
「あ、曖來どうしてここに・・・?

てか今の見てたの?」

琉翔先輩の声は穏やかなままだった。

それが私は何よりも悲しかった。

「・・・どういうことですか」

「・・・」

何も答えない先輩に。

「どういうことですか!!!」

私は思わず怒鳴りかかってしまった。

先輩は申し訳なさそうな顔をしていた。

「・・・っ。すいません。つい。」

「ここじゃなんだから2人で屋上で話そっか。」

先輩の声は少し枯れていた。

「はい・・・」

消え入りそうな声で私も返事をした。




無言のまま私と先輩は屋上に行った。


・・・・・・

「ごめん」



重い沈黙を破ったのは

琉翔先輩のそんな言葉だった。

「ちゃんと説明してください」

「・・・実は俺あの子のこと好きになっちゃったんだ」

「・・・彼女の私よりも?」

「・・・うん、ごめん。

今日言おうと思ってたんだ。」

「どうしてあの人なんですか?」

「あの子ね、親からも、担任からも見捨てられて

頼れる人がいないんだ。俺しか。」

「だから・・・放っておけないんだ。

俺がそばにいないとあの子は・・・。」

「だから・・・」

私はだいたい予想がついていた。

次の言葉はきっと・・・。

無常にも2人の言葉はリンクした。
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