満月の夜に優しい甘噛みを
「じゃあごめんね。

今までありがとう。

楽しかった。」

先輩のどこか涼やかな声。

「・・・はい。

私も楽しかったです・・・。

先輩の彼女になれて幸せでした。

彼女のこと守ってあげてくださいね。」

大人じみた言葉を伝える。

本当はそんなこと心の中じゃ思ってないのに。

私は泣きそうになるのを必死にこらえ

笑顔でそう伝えた。

「ありがとう・・・。」

それだけ言って先輩は

私の前から立ち去った。

泣きたかった。もっと喚きたかった。

もっと必死に別れるのを止めたらよかった。

もっと・・・

出てくるのは後悔ばかりだった。

私は、そんな自分が大嫌いになった。



美弥俚に慰められながら私は、下校した。

美弥俚と別れた私は、

自然と公園に吸いこまれるように入っていった。

ベンチにゆっくりと腰をかける。

(久しぶりに来たな・・・。

ここで先輩に告白されたんだっけ)

思い出したくない過去を思い出してしまう。
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