満月の夜に優しい甘噛みを
その途端私の目が熱を帯びていくのを感じた。

・・・先輩を信じていた気持ち。

裏切られた気持ち。

悲しい気持ち。

まだ信じたかった気持ち。

いろんな思いが、混ざって

ぐちゃぐちゃになってしまう。

(何も考えたくない・・・。

もう、終わったの。)




「・・・なにしてんの?

こんなとこで。」

私の頭に響いたのは低くて優しい声だった。

「・・・っ、なんでもありません。」

誰にも、自分の泣き顔を見られたくなくて、

私はこの場を去ろうと、立ち上がった。

「おい、待てよ。」腕を強く掴まれた。

「あ、あの・・・」

「あ、悪い。」

すると、彼はそっと腕を離してくれた。

暗くて顔は見えない。

「・・・大丈夫か?

顔色も悪そうだし・・・」

「だ、大丈夫です。ありがとうございます・・・」

そう言って立ち上がろうとした

その時だった。

・・・目の前の景色が歪み、徐々に視界が

霞んでいく。
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