最初で最後の恋。
王子の求婚
「夕空さん、ちょっと良いかな?」
「浅井くん?夕佳っ、私ちょっと行ってくるね。」
何か夕佳が叫んでいたけれどなんだか怒ったような浅井君に戸惑い夕佳のことなんか頭の片隅にすら置かれて居なかった。
浅井君の後ろを歩いて行くとそのうち立ち入り禁止の階段についた。
「まあ、こんな所登るんですか?」
「?、ええ、登ったことありませんか?」
ないですと答えた途端ギシギシと軋んでいた螺旋階段の一つが三階から螺旋階段の中心部を辿って一階へ落ちて行った、そのすぐあとにガッシャーンという大きい音と石同士がぶつかったような鈍い音が響く。
「夕空さん、俺から離れないで」
怯える私へ差し出されたのは紛れもなく学校のプリンスである浅井君の手のひらだった。
その整った容姿に、握られた手に心踊らせながら歩くこと五分あまり
ようやく着いた屋上は風通りが良くて景色も良くて澄んだ空みたいに心にすうっと風が通った
「あのさ、夕空さん。」
声と共にゆらりゆらりと寝転がっていた私の方へ浅井君は近づいて来たと思っていたら急に後ろから腕が回された。
「へ?あっ、浅井きゅん?!」
「俺と結婚を前提に、お付き合いしてください。」
至近距離で耳に吹きかけられる声と回された腕が熱くて、考えられ…
「えっ?!」