最初で最後の恋。
新たなライバル!
「おはよう、紗江。」
「どうしたの。そのクマ。何かあった?」
ペラペラと本を捲る紗江はまるで此方を向かない、紗江まで私を突き放すの?そう言いたくなる口を無理に塞いだ。
紗江は何も言わない私を不思議に思ったのか此方をちらりと見てため息をついた
「私溜息つかれるようなことしてない。」
頭に来た私はそのまま教室を出た
紗江に何かあったのは知らないけど私に当たることないじゃない!
屋上へ続く階段を駆け上がって立ち入り禁止の貼り紙がされたドアを思い切り開けた。
屋上はスッキリとした朝特有のいい匂いの風が吹いてスカートがひらひらと靡く
秋だから足が少し寒いけどそれくらい今の教室に比べたら全然マシだ。
ブブブと鳴る携帯を取ると着信履歴に紗江、夕佳の名前が続いていた
ピーッとなるまで電源を押して、携帯の電源を落とした。
すると不意に
「出なくていいの?」
と声が後ろから響いて後ろを向くとずっと昔から知っている幼馴染が立っていた
夕佳よりもずっと仲のいい友達
「ユキ!帰って来てたの?!」
私は嬉しさのあまり思わず抱きついてしまった。この人は冬紀 ユキ、幼稚園から一緒でいつも隣に居て
子供の頃からずっと私を護ってくれてた
でも中学の頃に親御さんの意向で色んな国へ行って色んな経営学を学びに行ってた、はずなのに。
でも、また一緒にいられるのならどうでも良いや。
「ただいま、カエデ。」
「おかえり。」
今だけは忘れられる、悟にいのことも夕佳のことも紗江のことも。