最初で最後の恋。
「御愁傷様です。」
そんな上っ面ばかりの言葉がかけられて行きお葬式もそろそろ終わり。
私はこれから住む家も家族も居なくなったこの世界で生きなくてはならないのだと思うと堪らなく胸が詰まった。
真っ黒の喪服を着て皆父と母の棺桶に近づく、姉の友人達は号泣しながら姉の棺桶を取り囲んでいる、どうしてこんな早くにって言葉を代わる代わる口にして。
あの時から涙は一滴も出なかった。
枯れ果てたのだろうか、哀しい気持ちも何もかもがぽっかりと空いた。
あの時きっと…いや、間違いなく私の時計は止まってしまった。
保険金も降りるって説明が来たけど、お金でお母さんも、お父さんもお姉ちゃんも買えるなら買ってるよ、とっくに。
お金なんか要らないから、返してよ、神様。
そう思ったって、いくら考えたって皆は帰っては来ないし私の日常も帰ってきやしない、涙も感情すらも帰ってくる気がしない。
そんなことを思っている私に親戚達は可哀想にとだけ言って引き取ろうとするものは当然だが独りも居なかった。
ポンと肩におかれた手に夕佳かと思い顔を上げるとそこには、「覚えてる?俺のこと。」と笑う悟さんが立っていた。
「悟さん、なんでここに?」
「恩人の御葬式に顔を出さねー恥知らず何処に居んだよ。」
この人は、夜月悟(やづきさとる)さん。
昔から近所に住んでてずっと遊んでくれてた優しいお兄さんで、今は知らない人は居ないほどの人気俳優(神代悟)になってしまった。
会うのはおよそ三年ぶり
まさかこんな所で会うことになるとは思っても居なかった。
私はこれからどうなるんだろう、売られるのかな。
施設かな、なんて考えている私の脳に
「この子俺が引き取ります。」
という悟さんの声が響いた。