あなたにspark joy
なのに状況だけは、しっかりと眼に焼き付いていた。

少し黄みがかった銀の満月。

パステルカラーの水しぶきと明るい外灯。

それに、篠宮慶太。

きらびやかな噴水が、まるで私と篠宮慶太を恋人か何かと勘違いしてるようだ。

こんなことは初めてで、私はポカンとして篠宮慶太を見上げた。

なにこれ。なにこの状況。

その時、篠宮慶太が私を見つめてクスリと笑った。

それから握ったままの手を引き寄せると、自分の身体に私を押し付けた。

ゆっくり、それでいて優しく。

「……寒くない?」

寒くないと答えたら、彼は私を離すだろうか。

じゃあ……寒いと答えたら?

男らしい眉の下の、涼やかな眼から視線が外せない。

確か……彼の瞳は栗色だったように思うけど……。

なにも言えずただ一心に見つめることしか出来ない私を見下ろして、何故か篠宮慶太は形の良い唇を僅かに開いた。
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