あなたにspark joy
***

すぐにでも弁解したい気持ちを抑えつつ、俺は会社に向かったが、ゲートで一緒になった彼女は、異様に落ち着き払っていた。

あまりにもさっぱりとした表情と儀礼的な笑顔。

職場にプライベートを持ち込まないにしても、あまりにもメリハリつきすぎだろ。

思わず腕を掴んで彼女を引き留めた俺の方がなんだか女みたいじゃないか。

アッサリと俺に会釈をして颯爽とエレベーターに乗り込む彼女を見つめていると、秋彦の言葉が脳裏をよぎった。

『園田真優は実にサバサバしてて切り換えが早い』

たとえば少しでも彼女が俺を好きで、でも麻耶との中を誤解したとすれば。

ゾッとした。

彼女が俺を恋愛対象外だと思い、たとえば高広や、源川コーポレーションの誰かを好きになったりしたら……。

いつものショットバーで、俺は真横に座る秋彦に向き直った。

それから、ハッキリとこう告げた。

「秋彦、気合い入れる為に宣言するけど、俺、真優ちゃんが好きだ。彼女を恋人にする」
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