あなたにspark joy
好きな相手から運良く好かれて恋人同士になれるのって、どれくらいの確率なんだろう。

私は、ゆっくりと歩く恋人達に眼をやりながら、漠然とそんな事を思った。

いや、考えないでおこう。だって惨めすぎるもの。

急いで左右を確認すると、道路を素早く横切りながら思った。

今日は思いきり泣こう。

……あの時……抱き合う篠宮さんと佐伯さんに遭遇したあの日、ちゃんと泣いていればよかった。

あの時涙は出なかったけど今思うと、心のどこかで泣くまいと頑張っていたんじゃないだろうか。

あの時思いきり泣いてスッキリしていれば、早く立ち直れたかも知れないのに。

道路を渡りきり、公園を迂回しようとした瞬間、鼻がツンと痛くなった。

まだだ、まだ泣くな、私。

やっぱり、公園を突っ切って近道しよう。

公園を突っ切れば最短で部屋に着くもの。

それまで頑張れ、私。

歯を食いしばって公園に足を踏み入れたら、眼の端に噴水が写った。

ここで、あの夜……。

泣くな、まだ泣くな。

その時、慌ただしい靴音が背後から響いた。
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