あなたにspark joy
……これは……これって、その……。

「あの、ちょっと篠宮さん、苦し……」

「それから……好きだよ」

勢い良く噴き出る水の音と、私の耳元で響く篠宮さんの低く柔らかな声。

「すごく好きだよ」



『好きだよ』



多分……生まれてから一番鼓動が跳ねた。

硬直する私を抱き締めたまま、篠宮さんは続けた。

「佐伯さんとは本当に別れてるし、もう何もない。あの日はずっとほったらかしになっていた荷物を引き取りに来てもらっただけだよ」

……え……それって……そうなの?私はてっきり……。

「だ、だって抱き合ってたし」

私がそう言うと、篠宮さんは少しだけ身を起こして私を見下ろした。

「彼女が『最後にサヨナラのハグをさせて』って言うなり抱き着いてきて……そこに真優ちゃんが来て」

私は真剣な眼差しで真っ直ぐにこちらを見下ろす篠宮さんを見上げた。

「本当だよ」

私はコクンと頷いた。

それを見た篠宮さんが小さく咳払いをした後、意を決したように続ける。

「俺多分、ここで君にキスをした時にはもう、好きになってたんだと思う」

「……え……」

驚きのあまりかすれてしまって、私の言葉は恐らく声になっていなかったと思う。
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