あなたにspark joy
「生意気だなって思ったけど……でもあの時から好きになってたんだって今なら分かるんだ。それに関われば関わる程、その気持ちがどんどん強くなって」

真剣な口調で話す篠宮さんの姿が、徐々に歪んでいく。

篠宮さんは一旦言葉を切って、困ったように笑った。

「ごめん……泣かせるつもりはなかったんだけど」

私も……泣くつもりじゃなかった。でも、だけど、涙が勝手に。

「……高広に怒られるよな、こんなことして」

……え?

篠宮さんがハンカチを取り出して私の涙を拭いてくれた後、淋しそうに笑った。

「秋彦にも恋愛偏差値が低すぎるって言われたし、高広にもいつもダメ出しされてるんだ。今更好きだなんて言ってごめん」

ゆっくりと篠宮さんが私に回した腕を解いた。

「送るよ」

身体に新しい空気が触れて、私はその冷たさに思わず息を飲んだ。

それを感じた途端、瞬間的に身体が動く。

嫌だ、ずっと感じていたい、篠宮さんの温もりを。

離れていこうとする篠宮さんの背中に、私は思いきり抱きついた。
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