あなたにspark joy
「めちゃくちゃ気に入らないけど、アイツがあなたを褒めるから……もういいかなって。慶太の相手があなたでいいかなって」

佐伯さんがツンと横を向いた。

「なにも言わないで。あなただけには何も言われたくないわ。惨めになりたくないから。この話はもう終わりよ」

言い終えた佐伯さんは、もういつもの佐伯さんに戻っていて、その横顔は相変わらずクールだった。

美しい横顔を見つめながら、私は彼女が泣きながら言った言葉の意味が分かった気がした。



『最悪よ、あなたは。挑みもしないで思いを封じ込めるなんて。私がどんな気持ちで……!』



……佐伯さんは多分……可能性を捨てない人なんじゃないだろうか。

いつでも、ほんの一筋でも希望があるとしたなら傷付く事を恐れず、それにかけて突き進んでいく強い心の持ち主なんじゃないだろうか。

私は佐伯さんを眩しく思った。

私にはない、強い信念を持って行動できる佐伯さんが眩しかったのだ。

こんな風に出会わず、もっと別の出会い方だったら、私と佐伯さんはどんな関係だったのだろう。

「なによ、その顔」

佐伯さんが、私を見て浅く笑った。

「さあ、仕事の準備するわよ」

「はい。今日も一日、よろしくお願いします」

それからはいつも通り、彼女と私は必要以上に言葉を交わすことはなく、ただ黙々と仕事を続けた。
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