あなたにspark joy
最悪な再会
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「あのー………………真優ちゃん………………小さいやつでいいから………………棚買ってよー……棚ー」
「ダメですよぅ、橋本課長。今月は備品の予算使っちゃってゼロなんです」
私はニッコリ微笑んで、橋本課長の『オネダリ』を退けた。
設計課の橋本課長・推定年齢55歳。
とても穏やかな課長だ。
けどね。
穏やかだからって、喋るのが遅すぎる。
電話なんて、いつ会話が終了したのか分かったものじゃない。
彼にはいつも妙に長い『間』が存在していて、受話器を置くタイミングがまるで分からないのだ。
入社当時、そんな事知らなかった私は、社内電話の向こうから突然やって来た沈黙に、会話が終ったんだと思って受話器を置いて課に戻ったら、
「まだ…………話してたんだけどー……」
なんて言われて驚いた事がある。
それを聞いていた先輩の妹尾さんが、
「真優ちゃん、橋本課長と話すときはね、最後に『課長、もう電話切っていいですか?』ってちゃんと聞かなきゃダメよ」
「あのー………………真優ちゃん………………小さいやつでいいから………………棚買ってよー……棚ー」
「ダメですよぅ、橋本課長。今月は備品の予算使っちゃってゼロなんです」
私はニッコリ微笑んで、橋本課長の『オネダリ』を退けた。
設計課の橋本課長・推定年齢55歳。
とても穏やかな課長だ。
けどね。
穏やかだからって、喋るのが遅すぎる。
電話なんて、いつ会話が終了したのか分かったものじゃない。
彼にはいつも妙に長い『間』が存在していて、受話器を置くタイミングがまるで分からないのだ。
入社当時、そんな事知らなかった私は、社内電話の向こうから突然やって来た沈黙に、会話が終ったんだと思って受話器を置いて課に戻ったら、
「まだ…………話してたんだけどー……」
なんて言われて驚いた事がある。
それを聞いていた先輩の妹尾さんが、
「真優ちゃん、橋本課長と話すときはね、最後に『課長、もう電話切っていいですか?』ってちゃんと聞かなきゃダメよ」