あなたにspark joy
「秋彦……!」

秋彦?誰ですか、それ……。

なんて思いながら後ろを振り返った私は、大きく息を飲んだ。

それからもう一度前を向き、カウンターのモスコミュールをガブガブと飲み干す。

……私の眼が近視でも乱視でもなけりゃ、後ろの男はどう見てもうちの社長に見えるのだけど。

私はガツンと妹尾さんに肘鉄を食らわせ、彼女の気を自分に向けた。

「痛いわよ、真優ちゃん」

「それより妹尾さん。……秋彦が凄く社長に見えますが」

倒れるように身を寄せ、妹尾さんの耳に小声でこう言うと、彼女はクスッと笑って悪戯っ子のような瞳で私を見た。

「秋彦は、社長だよ」

「マジで!?」

「うん」

ということは何?!

妹尾さんは、私達の勤める会社、源川コーポレーションの社長と知り合いだと。

その時、再び背後の秋彦が明るい声を出した。

「どうも、社長の秋彦ですぅ。真優ちゃん、いつも俺の婚約者がお世話になってます」

……なんだって?!

こ、こ、婚約者!
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