あなたにspark joy
目一杯壁に貼り付きすれ違う男性をやり過ごそうとしていた私は、社長のその一言で私の腕を掴んだ男性を驚いて見上げた。

その時の衝撃といったら。

見覚えのあるその男性の顔に、私は心臓をグイッと掴み上げられたような感覚を覚えた。

「……っ!」

「あ……」

なんでっ!?

瞬間冷凍されたように硬直する私を見て、腕を掴んだままの男性が小さく呟いた。

「噴水の……」

たちまち、あの噴水の中でキスをした情景が脳裏に蘇った。

「慶太、ナイスタイミングだ。グッジョブ!」

社長の嬉しげな声が、やはり間違いではないと語る。

慶太。

ああ。

二度と会うことはないと思っていたのに、こんな風に出会うなんて。

「ほら、真優ちゃん、俺達だけじゃなくて俺の友達もいるからさ、気兼ねしなくていいんだよ。しかも今日はね、こいつの面白い話を聞く予定なんだ。なんでも、飲み会で知り合った女の子に噴水に突き落とされたらしくてさ。面白そうでしょ」

面白くない、全然面白くない。

私は篠宮慶太から眼をそらすと、観念して両目を閉じた。
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