あなたにspark joy
言うなり掌をそっと私の額に押し当てて、数秒唇を引き結んだ。

「……下がったな。良かった」

反射的に眼を閉じてしまっていたけれど、その言葉の直後に額だけに新しい空気を感じ、彼の手が離れたのが分かった。

眼を開けると同時に視線が合って、気まずいなと思った瞬間、篠宮慶太がニッコリと笑った。

「スープ作ったんだ。一緒に食べない?」

「よ、よいの……ですか」

「プッ……」

「なに……」

「……別に」

「あの、篠宮さんも熱、下がったんですか」

「うん」

うん、と言った彼が、さりげなく私から眼をそらした気がした。

いや、気のせいか。でも……。

「……っ!」

「ダメです、ジッとして」

伸ばした手を反射的に避けようとした篠宮慶太の額に、私は強引に掌を押し付けた。

やっぱりな。

「……まだ熱いけど」

私がそう言うと、彼は決まり悪そうに笑った。
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