あなたにspark joy
「……ごめん、お客さんにこんな事させて」

その時後方から篠宮さんの声がして、私は振り返って首を振った。

「……いえ、ご迷惑をおかけしているのは私の方ですし。あの、ここで召し上がりますか?寝室に運んだ方がいいですか?」

「ここでいいよ。一緒に食べよう」

…………。

それは……嫌だ。

凄くお腹は減っているけど、私は嫌だった。

だって確か昨日は、着替えたところで力尽きてお化粧したまま寝ちゃったし、篠宮さんに借りた服があまりにもブカブカで変だし、とにかく私は今、ヒドイ有り様なのだ。

こんな姿をこんなイケメンに、正面切ってさらす勇気はまるでない。

「とても美味しそうですけど、私は結構です」

「どうして?」

どうしてって、それはその……。

巧い理由を考えられず口ごもる私の脇を抜けて、篠宮さんはスープ皿から美味しそうな液体をひとすくいした。

「美味しい。味、整えてくれたんだね」

「……はい……」

私が小さく頷くと、篠宮さんはフウッと笑ってスープをもうひとすくいした。
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