あなたにspark joy
その時、開けっぱなしのリビングのドアの方から何やら音が響いた。

「兄貴ー?いねーのー?」

ドアが閉まる音と、こちらに近づく足音。

誰か、来た。

篠宮さんを兄貴と呼ぶからには弟だろうけど、兄貴だけじゃなく、私もいるわけで……。

ど、どうしようっ、兄貴の服着てるし化粧落ちかけだしっ。

こんなの、あらぬ誤解を……。

「えっ?!」

「……嘘!」

隠れる時間なんかあるわけもなく、私はやって来た篠宮さんの弟と顔を合わせると、衝撃のあまり息を飲んだ。

「真優!」

「な、んで高広が……?」

予想していなかった展開に、頭が混乱する。

高広……高広は、半年前に別れた私の元カレだ。

別れるに至った決定的な理由こそないが、お互いに多忙で、すれ違い気味になった為に自然消滅してしまったのだ。

その高広が、なんで……。

無言で数秒見つめ合った後、高広が私を上から下まで舐めるように眺めた。

「真優、兄貴と付き合ってんの」
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