あなたにspark joy
「……わかった。上山さんの方は、私がなんとかしてみる」

『ごめんな、真優ちゃん!ひとつ貸しにしといて!』

「あいつ、なにしてんだよ」

受話器を置いた私に、上山さんが鋭い視線を送る。

「それが……S工場で専務に呼ばれて」

「はあ?!お前、ちゃんと俺の話、アイツに伝えたのかよ?!コピー取りとお茶くみしか能がねえ挙げ句、伝言すら出来ねーのかよっ!」

「すみません!」

伝えた。

確かに私は伝えた。

でもここでそれを言うと、石井くんが悪者になっちゃうし、男同士で揉めると後々大変だろうし……。

「あの上山さん、五分ください!すぐ戻ります」

私は上山さんにそう言うなりガバッと頭を下げると、保全課を目指した。

保全課の藤田さんは数年前まで製造部に所属していた筈だ。

鋳造機にも詳しくて、確か以前、急きょ鋳造機と炉のメンテをしていた事があったような。

もしかしたら、五号機を見てくれるかも知れない。

私は保全課の現場を目指して一目散に駆け出した。

やがてその重い引き戸の前で、ハッと頭に手をやり、思わず溜め息をつく。

しまった……!メットを忘れた!
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