あなたにspark joy
メットをかぶらない人間は現場には入れない。

私は保全課の重い引き戸を全力で開けると、作業場を覗き込んだ。

途端に、その気配を感じて入り口付近で作業をしていた男の子が私を見た。

すかさず手招きで呼び寄せると、騒がしい音に負けないように声を張り上げた。

「藤田さんは?」

「さあ……今日は二直だから、まだ帰ってないとは思うけど……」

二直は二時から二時までだ。

時計を見ると午後一時だった。

「あ、あそこだ!マスクしてるから気付かなかった」

彼の指の先に、溶接マスクをかぶり、火花を散らしている藤田さんを見つけた。

「藤田さーん!園田さん呼んでます!」

その声で作業を中断し、マスクを脱いだ藤田さんが、私に眼を止めてニッコリと笑った。

「おー、真優ちゃん!ひっさしぶりー!」

藤田さんは四十代後半の渋いオジサマだ。

「藤田さん、あの私」

藤田さんが、少し真剣な眼差しを私に向けた。

「真優ちゃん、落ち着いて。どうした?」

「藤田さん、助けてください!」
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