あなたにspark joy
運転席と助手席の距離はそう遠くない。

その距離に胸が高鳴って、どうしようもない。

こんな時に限って、さっき胸に抱かれた感覚や噴水でのキスが脳裏に蘇る。

やがて篠宮さんの運転する車が私のマンションの前に停まった。

「……ありがとうございました」

「真優ちゃん」

「……はい」

ドアに手をかけた私を篠宮さんが呼び止める。

「来週から宜しくお願いします」

少し笑ってそう言った篠宮さんに、一際鼓動が跳ねた。

「……はい……」

本当は『精一杯頑張ります』とか『御社のお役に立てるように努力します』とか色々と考えていたのに、私はこう答えるのが精一杯だった。
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