雨上がりの恋
赤い傘のせいなのか、ケンイチの頬が心なしか赤く染まって見えるんですけど。


それに、


いくら日頃から一緒にいると言ってもこの小さな折り畳み傘の空間に二人でいることに今更ながら照れる。


この鼓動がバレませんようにと敢えて憎まれ口を言ったつもりなのにーーー


「いや、ほらさ、どうせ帰る方向同じなんだしお前と帰れば濡れなくて済む。だから、俺はお前と帰りたいって訳だ。」


そう言いながらも明らかに私の方へ傘を多めに寄越してるケンイチの肩はかなり濡れている。


相変わらずの愛想無い言葉の裏にいつもさりげない優しさがあったりする。


少しは期待してもいいのかな?


うーん…


いや、やめとこ。


私がケンイチに対して寄せる思いとケンイチの私に対する優しさとは重さが確実に違う。


「お前、ほんっと昔から雨女だな。」


「今更、それ言う?」


「言うよ。だって誰のお陰だと思ってる?」


「は?なにが?」


その先の言葉を何度となく聞いてきたけどわざとらしくとぼける。


「ったく…、いいか?遠足、運動会、入学式に卒業式、その他諸々の行事が雨で中止にならなかったのはーーー」


「はいはい、超絶晴れ男のケンイチ様のお陰です。でしょ?」


「ふん、分かれば宜しい。ほれ、もっと近う寄れ。」


「なにそれ、偉そうに。まるでバカ殿じゃん。」


「お前、誰がバカ殿だよっ。」


出来るだけくだらないバカな会話をした。


でないとーーー


家に着くまで私の心臓が持ちそうにない、から…



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