雨上がりの恋
帰る前に3年の教室に寄ると噂の中川ケンイチがいた。


「まだ、いたの?」


「あっ、ちょっと忘れ物。」


「そっか。っであったの?」


「うん、見つかった。」


「そっか。じゃまぁ、気をつけて帰れよ。雨降ってきたし。」


「うっす。」


うっすって…


教師と言っても2年目でまだまだ他の先生方よりもずっと若い俺は生徒から親しみ持たれるのは良いけれど、基本、こいつらーーー


タメ口なんだよなぁ。


まっ、良いけどさ。


さて、教室の戸締まりして帰るか。


「あっ、先生。」


「なに?」


「俺、サッカーばっかやってっけど…大学行くとこあるかな?」


「えっ、」


いきなりの進路相談ってか。


「うん…、実際、どうかなって。」


確か…中川って


「中川、サッカーばかりやってる割には結構、上位にくいこんでるじゃん。」


「えっ、ああ、まぁ。それなりには。」


「それなりで上位に入ってるんだから本格的に受験勉強始めたらいくらでもあるよ。入れる大学。」


うん、それは間違いない、はず。


なのに、浮かない顔の中川。


「いや、なんつーかぁ…つまりその…俺、ちょっと最近、やりたい事っつーか、なりたいもの?」


その疑問系どうなんだ?


「なりたいものって?」


教師らしく聞き返す。


「俺、先生になりてぇなーなんつって。」


な、なんつってって…


「中川、先生になりたいの?」


「ダメっすか?」


「いやいやいや、全然駄目じゃないよ。うん、素敵だよ。」


「マシで?やべぇ、俺。」


うん、色々とやべぇ、気はする。


だけど…、


「部活は夏までなんだっけ? 」


「まぁ、俺、レギュラーなんで。」


「そっか、まぁでもなるべく具体的な志望校決めて、部活しながらでもやれる事、やっていくといいと思うよ。」


「なるね。」


なる?ね?


ああ、なるほどってことか。


俺、まだ20代前半なのに、こいつらといるとマジで老け込んだ気がする。


「まぁ、何でも聞いてよ。特に受験英語得意だし。何よりもそのやる気があればなんだって出来るよ。」


教師らしい事、言ってるよなぁ俺。


俺こそ、やる気だせよな。












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