雨上がりの恋
「先生?」
「えっ、ああ…」
「大丈夫?なんか俺やば目な事、言った?」
「いや、ちょっと他の事、考えてて…悪いね。」
「全然、いっすよ。俺もなんでこんな話、先生にしてんだろーって感じだし。」
「ああ、いや、嬉しいよ。こんな風に話せて。ほら、なんか…教師になったーって感じ?」
「先生が感じ?とかヤバくね?」
おい、そこは引くなよ。
「そうだね。ちょっと若者ぶってみた。」
自嘲気味にそう言うと
「えー、良いじゃん。先生って言っても俺らと10もかわんねーじゃん。後、もう10年20年って経ってみたらさ、どっちもいいおっさんじゃん。」
「だな。」
確かに中川の言うとおりかもな。
「んじゃ、俺、行くわ。っと…」
中川はそこまで言うと
ーーーー先生、俺だったら惚れた女一度抱きしめたら何があっても離さいないな。
ぽつりと言った。
「えっ…」
「ん?ああ、先生によく似たどこかの誰かのあの時の顔がさ、人って後悔した時、こんな顔するんだーって頭から離れねぇんだよな。まっ、どーでもいい話っすよね。んじゃ。」
「お、おう。」
それだけ言うと今度こそ、中川は去って行った。
中川はやはり優秀だ。
彼ならきっといい大学にも入れるだろうし、いい教師にもなれるだろう。
適当そうに見えて、よく周りの人を見ている。
そして自分自身の事も。
それに引き換え俺はーーー
この二年、何をやってきた?