雨上がりの恋
「なんか、飲む?」
「あっ、うん…。」
「マティーニでいい?すぐ作る。」
「うん…」
オーナーが気を利かせて私達を二人きりにしてくれた。
今の私達の関係を知ってても素知らぬ顔で彼にお店の鍵を預け先に帰って行ったオーナーは私とそう歳も変わらないはずなのに、
ずっと、ずっと、大人の女性って感じがする。
カウンターの中でシェイカーを振る彼の姿にあの頃の記憶が鮮明に蘇る。
かつて、家庭教師と教え子だった私と彼。
数年後、この店で再会した時、見違えるほど大人っぽくなっていた彼を直視出来なかった。
6つも年下なのに…
心に必死にブレーキを掛けるのに彼は意図も簡単に私の心に入り込んできた。
私と彼は家庭教師と教え子から男と女の関係になった。
自分自身、彼とのそういう関係に戸惑いながらも彼への気持ちを止める事は出来なかった。
と同時に年下相手に素直になれない自分に戸惑いを隠せなかった。
そんな自分が嫌だった。
「お待たせ。」
「あっ、どうも。」
無駄な動きのない動作で最後にオリーブをグラスに差し入れると目の前にスッと差し出された。
緊張しながらも手に持ち一口つけると
懐かしい味が広がった。