雨上がりの恋
「なぁ、もう一回…しよ?」
猫なで声で甘えてくるケンイチに冷たい視線を送り付ける。
「ダメ?頼む、後一回だけ。」
「後、一回ってもう何回目だと思ってんの?無理っ。」
「そんな冷たい事言うなよ。なっ、次で最後にするから。このままじゃ俺悶々として今夜眠れない。」
「一生、起きてなさいよっ。一人でやれば良いじゃない。ねっ?」
「はあ?一人でって…お前、そりゃないよ。相手がいなきゃ…燃えないじゃん。」
ったく…
ちょっと顔が良いからって、そんな目で見つめるなっつーの。
腹立つ。
あーもう、こんな奴に惚れてる自分に腹が立つ。
「…分かった。じゃあ、ほんとこれが最後だよ。」
渋々、ケンイチに手を伸ばすとーーー
ゲームのリモコンを受け取った。
「やっりぃ。見てろ、次こそは息の根止めてやる。」
はぁ…
私、こんなお子様みたいな奴のどこに惚れたんだろ?
ケンイチと私は子供の頃から同じ団地のお隣同士。
いわゆる、幼馴染みってやつ。
っでもって一方通行の思いを私だけが抱えているのはケンイチには内緒の話。
お互い、両親共働きの鍵っ子と言うこともあり、昔から学校が終わるとどちらかの家で過ごしている事が多かった。
それは高校生になった今でも変わることなく、お互いに部活が終わると何となく一緒に帰って、適当にマックとか寄ったりして、それで最後はーーー
「はい、終わりっ。もういいでしょ?明日の朝練がキツくなる。」
「えー、マジか?もうダメなの?」
「しつこい!それにもうちょっと腕上げてから私に挑みなさいよ。」
ったく、下手くそな癖に負けず嫌いは質悪い。
こうしていつも部活が終わって家に帰ってもゲームをしながら一緒に過ごすのが私達の日課だ。